この記事を読んでいるということは、あなたは長い学生生活と国家試験を無事に終え、これから理学療法士として働く、新社会人なのでしょう。
まずは国家試験お疲れ様でした。そして、入職おめでとうございます。
さて、期待と不安を抱えて、いざ、働こうと意気込みたいところですが、何をしたらいいのかわからないのが、新社会人です。
実際に働くと、理想と現実の違いにショックを受ける人も少なくないでしょう。
私も当時は悩み、試行錯誤しましたが、現在10年間、理学療法士として働いています。
ここからは、私の新人時代+後輩の教育。そして、10年の勤務を経てわかった「1年目に本当にやるべきこと」をまとめていきます。

1〜4はどんな職業でも同じで、社会人として必要なこと。
5〜8は理学療法士、医療人として必要なこと。
9と10は1年目に必要な考え方です。
ひとつずつ説明していきますね。
接遇面を身につける

医療現場に求められる接遇【医療接遇】には基本となる5原則が存在します。
- 身だしなみ
- 挨拶
- 表情
- 態度
- 言葉遣い
患者様やご家族様への個人の行いが、職場全体の評価に繋がります。新人は特に気をつけて業務に取り組みましょう。
身だしなみ|清潔感で第一印象をよくしよう
医療現場では、清潔感と安全性が必要です。具体的には「爪が伸びている」「髪型が整っていない(長すぎる、派手な髪色)」「制服や靴下、靴などにシワや汚れが付いている」などです。
患者様は初対面であり、自分よりご年配の方がほとんどです。
第一印象で良い印象をもってもらうためにも怠らないようにしましょう。
挨拶|目線を合わせ、反応を示そう
患者様からスタッフまで、院内や施設内は多くの人とすれ違います。
業務の忙しさから、ついつい挨拶をおろそかにしてしまう人もいます。
何か作業をしながらの、「ながら挨拶」や「会釈程度の挨拶」など、どこか冷たい印象を持たれます。
挨拶は立ち止まり、目線を合わせてするのが望ましいですが、新人期間は慌ただしいでしょう。そのため、一瞬だけでもいいので目線は合わせるようにしましょう。
明るく笑顔で挨拶できると好印象ですよ!
表情|目元を意識しよう
今の時代、医療従事者は勤務中のマスク着用は必須です。
つまり、口元は隠れて見えにくくなります。笑顔で対応しても、以前のように相手へ伝わりにくくなりました。
そのため、意識したいのが「目元」です。
患者様はスタッフの表情から安心感や信頼感を感じ取ります。無表情で対応すると、「怒っているのかな?」「忙しそうだから話しかけにくいな」と思われてしまうこともあります。
患者様と接するときは、目元を少し柔らかくすることを意識してみましょう。
特別なことをする必要はありません。
これだけでも印象は大きく変わります。
態度|患者様を尊重する姿勢を持とう
理学療法士として働いていると、さまざまな価値観を持つ患者様と関わることになります。
中には、
- リハビリに消極的な方
- 男尊女卑や年齢差別をする方
- 厳しい言葉をかけてくる方
もいます。
しかし、どのような患者様であっても、私たちは医療従事者として敬意を持って接する必要があります。
新人の頃は評価や治療のことで頭がいっぱいになりがちですが、患者様にとっては「どんな治療をしたか」よりも「どんな人だったか」の方が印象に残ることも少なくありません。
また、患者様だけではなく、ご家族やスタッフへも同様です。
技術や知識は後から身につきますが、人としての姿勢は日頃の積み重ねです。
言葉遣い|友達言葉にならないよう注意しよう
新人理学療法士によく見られるのが、患者様との距離を縮めようとして友達言葉になってしまうことです。
例えば、
など、無意識に砕けた言葉遣いになってしまうことがあります。
患者様との信頼関係は大切ですが、馴れ馴れしさとは異なります。
といった丁寧な言葉遣いを心がけましょう。
特に新人のうちは、少し丁寧すぎるくらいでちょうど良いです。
個人情報の取り扱い
医療現場では、患者様の個人情報を扱う機会が非常に多くあります。
氏名や住所だけではなく、
なども重要な個人情報です。
新人の頃は業務を覚えることで精一杯ですが、個人情報の管理は最優先事項の一つです。
例えば、
といった基本的な行動を徹底しましょう。
また、特に新人はメモをよくとります。メモ紙一枚でも多くの個人情報を含んでいる可能性があります。失くさないのはもちろんですが、破棄の仕方にも注意が必要です。
一度の不注意が患者様や病院・施設の信頼を大きく損なう可能性があります。
職場のルールやシステムの把握
新人のうちは知識や技術の勉強に目が向きがちですが、まずは職場のルールを理解することも大切です。
例えば、
- 電子カルテの入力方法
- リハビリ実施記録の作成
- 休憩時間の取り方
- 物品の管理方法
- 緊急時の対応
などです。
どれだけ知識があっても、職場のルールが守れなければ安全な医療は提供できません。
わからないことは遠慮せずに先輩へ確認しましょう。
先輩たちは、自身の経験も踏まえ、新人時代は何もわからないことは知っています。
そのため、何もわからない時にどのように行動するかが評価されます。
新人に求められるのは「完璧にできること」ではなく、「わからないことを確認できること」です。
報告・連絡・相談(報連相)
新人理学療法士に最も求められる能力は何だと思いますか?
評価技術でしょうか?
治療技術でしょうか?
それらも大切ですが、私が10年間働いて感じるのは、「報連相ができること」。
これが最も重要だということです。
これは、どんな職業でも共通しますが、特に医療現場はたくさんの職種が業務しています。
医師から伝えられたこと、看護師からあるいはソーシャルワーカーから、たくさんの情報が行き交います。
「自分が情報を止めない」「間違った情報を出さない」ためにも、必ず報告や連絡は行いましょう。
また、新人のうちは知識も経験も不足しています。
そのため、自分だけで判断しようとすると、患者様の安全を脅かしてしまう可能性があります。
例えば、
このような場面で必要となるのが、相談です。
新人に求められているのは「完璧な判断」ではなく、「危険を察知し相談すること」です。
私も新人時代は、「こんなことで相談していいのかな」と悩んでいました。
しかし、今は後輩を指導する立場になり、相談がない方が心配になります。
一人で抱え込まずに先輩へ相談しましょう。
遠慮せず、積極的に報告・連絡・相談を行いましょう。
知識や技術の学習
理学療法士は国家資格を取得した瞬間がゴールではありません。
むしろ、そこからが本当のスタートです。
学校では国家試験に合格するための勉強が中心でしたが、臨床現場では患者様一人ひとりの状況に応じて考える力が求められます。
新人の頃は、
- 解剖学
- 運動学
- 生理学
- 病態理解
などの基礎知識を繰り返し学びましょう。
また、勉強会やセミナーに参加することも大切ですが、最初から多くの手技や特殊な治療法に飛びつく必要はありません。
なぜかというと、手技や特殊な治療法を学んだとしても、それを発揮する知識や経験がないからです。
まずは評価ができること。
そして、患者様の状態を理解し、説明できること。
これが何より重要です。
私自身、10年働いた今でも基礎知識の大切さを痛感していますし、日々知識を更新していかなければなりません。
基礎がしっかりしている理学療法士ほど、臨床で応用が利き、新たな技術にも対応していけます。
医療用語の理解
新人の頃は先輩や医師、多職種の会話がまるで外国語のように聞こえるかもしれません。
カルテには聞き慣れない略語が並び、カンファレンスでは専門用語が飛び交います。
しかし、焦る必要はありません。
まずは毎日出てくる言葉、リハビリ関係の言葉から覚えていきましょう。
分からない用語があればメモを取り、その日のうちに調べる習慣をつけてください。
現在は、スマホなんかで検索すれば、すぐに調べられます。
この積み重ねが数か月後には大きな差になります。
ただし、注意点として略語はスタッフ間でのみ使用すること。
患者様やご家族に対しては略さず正式な用語を用いましょう。
リスク管理能力を身につける
新人理学療法士にとって最も優先すべきことは「患者様を治すこと」ではありません。
まずは「患者様を危険な目に遭わせないこと」です。
理学療法は運動を伴うため、
などのリスクがあります。
そのため、
ことを徹底しましょう。
治療も大切ですが、怪我をしてしまえばリハビリも、患者様の努力も全て無駄になります。
なによりも安全性を優先する。
これは新人時代から身につけてほしい考え方です。
他職種とのコミュニケーション
「チーム医療」という言葉をよく耳にしませんか?
医療はチームで行う仕事です。
理学療法士だけでは患者様を支えることはできません。
医師、看護師、作業療法士、言語聴覚士、介護士、ソーシャルワーカーなど、多くの職種が関わっています。
新人のうちは緊張すると思いますが、自分から挨拶をし、積極的にコミュニケーションを取りましょう。
特に看護師との情報共有は非常に重要です。
患者様の日常生活の様子や病棟での状況、夜間帯の状態など、リハビリだけでは分からない情報を得ることができます。
他職種との関係づくりは、患者様へのより良い医療につながります。
失敗を恐れない、落ち込まない
新人時代は失敗の連続です。
私自身も、
ことばかりでした。その他にも…
毎日、指摘されていた気がします。何も指摘がない日には、逆に怯えたものです。
ただ言えるのは、失敗しない新人はいません。というか失敗しない人間はいません。
あなたのお父さんやお母さん、先輩、同僚、上司、みんな失敗した経験があります。
むしろ、失敗から学ぶことが成長につながります。
最近は、指摘されたことをいつまでも引きずり、落ち込み続ける新人が多いです。
落ち込むことは悪いことではありません。しかし、自分を必要以上に責める必要もありません。
先輩はあなたが嫌いで指摘するのではありません。成長してほしいのです。
2年目、3年目で同じ失敗をして欲しくないからこその指摘です。
新人は失敗するのが仕事だと思ってください。ただし、何度も同じ失敗をすることはダメです。大切なのは、失敗した後に反省し、同じことを繰り返さないことです。
すぐに辞めない
新人の頃は誰もが一度は「辞めたい」と思います。
辛いと感じることも多いでしょう。
しかし、入職して数か月では、その職場が自分に合うかどうかは判断できません。
一人暮らしも始めたばかりで慣れていないだけ。人間関係も関わりが増えれば良くなるかもしれない。まだまだ、状況が変化する可能性は十分あります。
まずは一年間続けてみましょう。
一年経つ頃には、職場にも慣れ、少しずつプライベートにも余裕が出てきます。一年間も関われば、自分と相性が良いスタッフも分かり、人間関係も思ったほど悪くないように感じてきます。
もちろん一年経っても辛いと感じ、状況が変化しない場合もあります。
本当に転職を考えるのは、それからでも遅くはありません。
まとめ
新人理学療法士に求められることは、最初から優秀な理学療法士になることではありません。
まずは、
- 接遇を身につける
- 個人情報を守る
- 職場のルールを覚える
- 報連相を徹底する
- 基礎を学ぶ
- 医療用語を理解する
- リスク管理を身につける
- 他職種と連携する
- 失敗を恐れない
- すぐに辞めない
この10項目を意識してみてください。
10年働いて今を振り返ると、技術や知識よりも、こうした社会人・医療人としての基礎を身につけた人の方が長く成長しているように感じます。
この基礎が、患者様からの信頼、先輩からの期待、後輩からの尊敬に繋がります。
新人時代は辛く大変であることは、よく知っています。私も経験しています。
しかし、これから何十年と業務していく中のたったの一年です。その一年だけで完璧な理学療法士になることは不可能です。何年か先に立派な理学療法士になるためにも、今は焦らず、一歩ずつ成長していきましょう。
